はじめに
結論から言うと、結婚後は新NISAの非課税保有限度額(1,800万円)を夫婦それぞれの名義で活用できるため、世帯単位で見た非課税枠は単身時代の実質2倍に広がります。本記事では、以前の記事で扱った28歳看護師の架空モデルケースが5年後に結婚・出産・育休を経て復職したという想定を続け、世帯収入での投資設計と教育資金の準備方法をシミュレーションします。
※本記事は架空の条件に基づくシミュレーションであり、特定の個人の実例ではありません。投資には元本割れリスクがあり、将来の運用成果や教育資金の準備状況を保証するものではありません。税額・制度の適用条件は世帯構成や自治体・勤務先の制度により異なります。具体的な判断はファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談のうえ行ってください。制度・税制に関する情報は2026年7月時点のものです。
モデルケースのその後:33歳・復職後の想定条件は?
- 年齢:33歳(既婚・都内在住、想定)
- 本人の職業:総合病院勤務・看護師(正職員、時短勤務から復職)
- 配偶者の年収:550万円(会社員、想定)
- 世帯年収:約1,000万円(本人の時短勤務による減収を織り込み)
- 子ども:1人(0歳、育休から復職したタイミング)
- 既存資産:以前のシミュレーションを引き継ぎ、NISA・iDeCo評価額166万円、生活防衛資金110万円を保有
結婚後、投資戦略はどう変わる?
非課税枠は「世帯で2倍」になる?
新NISAの非課税保有限度額(1,800万円)は、口座の名義人ごとに適用されます。そのため、夫婦それぞれが口座を持てば、世帯全体では単純計算で3,600万円分の非課税枠を活用できることになります。単身時代は自分の枠だけで完結していましたが、結婚後は配偶者の枠も合わせて設計できる点が最大の変化です。
iDeCoは育休中どう扱えばいい?
以前の記事の想定通り、育休中はiDeCoの掛金を一時停止し、復職後に再開します。企業年金のない会社員・職員の拠出限度額は2026年7月時点で月2万3,000円ですが、2026年12月分(2027年1月引落分)から月6万2,000円に引き上げられる予定です。復職後に掛金を見直すタイミングで、この制度改正も踏まえて再設定するのが実務的です。
世帯での新しい3本柱、配分はどうする?
Pillar 01:本人のNISA継続(月2万円)
以前からの積立をそのまま継続します。時短勤務中でも自動引落を止めない設計です。
Pillar 02:配偶者のNISA新規開設(月3万円)
配偶者名義でも新NISA口座を開設し、月3万円の積立を開始します。世帯の非課税枠を広げる目的です。ただし、これらの資産は市況によって元本割れする可能性があります。
Pillar 03:教育資金専用の積立(月1万円)
子どもが生まれたタイミングで、大学入学時期(18年後)を見据えた専用の積立枠を新設します。使う時期が決まっている資金のため、他の資産より抑えた想定利回りで設計します。
教育資金はいくら準備すればいい?
ソニー生命保険が2026年2月に実施した調査(有効サンプル1,000名)によれば、小学生から社会人になるまでに必要な教育資金の平均予想金額は1,458万円です。すべてをNISAでまかなう必要はなく、児童手当や日々の家計から支出する分も含めた総額であることに留意してください。本シミュレーションでは、そのうち大学入学時に一時的にまとまった負担が生じる費用(私立大学の入学金・初年度授業料は文系で約161万円、理系で約190万円が目安とされます)を意識し、月1万円の専用積立で備える設計にしました。
月1万円を年率3%(教育資金は使う時期が決まっているため、他の資産よりやや保守的な想定)で18年間積み立てた場合、試算上の元利合計は約283万円(積立元本216万円+運用益約67万円)になります。私立大学の入学時費用の目安を上回る水準ですが、進学先や物価の変動によって必要額は変わるため、この積立だけで教育費全体をまかなえるとは限りません。
なお、未成年者向けのNISA制度(いわゆる「こどもNISA」)の導入が政府内で検討されているとの報道もありますが、2026年7月時点では正式に制度化されていません。導入されれば教育資金準備の選択肢が広がる可能性があるため、今後の制度改正情報は継続して確認することをおすすめします。
5年間(33歳→38歳)の世帯シミュレーション
本人・配偶者のNISA積立合計(月5万円、年率4%想定)について試算します。実際の運用成果を保証するものではありません。
| 経過年数 | 累計投資額 | 評価額 | 含み益 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 60万円 | 61.2万円 | +1.2万円 |
| 2年目 | 120万円 | 125.0万円 | +5.0万円 |
| 3年目 | 180万円 | 191.7万円 | +11.7万円 |
| 4年目 | 240万円 | 261.5万円 | +21.5万円 |
| 5年目 | 300万円 | 334.6万円 | +34.6万円 |
これに、以前からの資産(NISA・iDeCo評価額166万円、生活防衛資金110万円)と、教育資金専用積立(試算上約283万円、18年間の長期積立のため5年目時点ではまだ一部)を合わせると、38歳時点での世帯資産は試算上、投資性資産だけで500万円台後半に達する見込みです。育休による一時的な収入減があっても、生活防衛資金を取り崩さずに積立を継続できる設計にしている点が、以前の記事から続くこの世帯の戦略の軸です。
世帯で資産形成する際に意識したい3つのことは?
- 非課税枠は夫婦で別々に管理する:NISAの非課税保有限度額は個人ごとの枠のため、どちらか一方に集中させず、それぞれの名義で口座を持つと世帯全体の非課税枠を最大限活用できる。
- 教育資金は「使う時期が決まったお金」として別管理する:他の資産と同じ利回りを前提にせず、必要な時期が近づくにつれて安全性の高い商品へ移す設計を検討する。
- 収入減の局面ほど生活防衛資金の役割が大きくなる:育休・時短勤務による収入減は、投資を取り崩すきっかけになりやすい。事前に確保した生活防衛資金があるかどうかが、積立継続の分かれ目になる。
よくある質問
配偶者名義のNISAは、自分の口座と何が違う?
制度上の仕組みは同じですが、非課税保有限度額(1,800万円)は名義人ごとに個別に管理されます。夫婦それぞれが口座を持つことで、世帯全体の非課税枠を広げられます。ただし、資金の出どころや贈与税の扱いには注意が必要な場合があるため、配分方法に迷う場合は税理士等に確認してください。
教育資金はNISAだけで準備すべき?
NISAは非課税のメリットがある一方、市況によって必要な時期に評価額が下がっている可能性があります。学資保険など元本保証に近い商品と組み合わせる、あるいは必要時期が近づくにつれて安全性の高い資産に移すなど、リスクを分散させる考え方が一般的です。
「こどもNISA」はもう使える?
2026年7月時点では正式に制度化されていません。政府内で検討されているという報道はありますが、導入時期や内容は未確定のため、最新情報は金融庁等の公式発表で確認してください。
まとめ
本記事では、以前の28歳看護師の架空モデルケースが結婚・出産・育休を経て復職したという想定のもと、世帯収入での投資設計と教育資金の準備方法を解説しました。
- 新NISAの非課税枠は名義人ごとのため、夫婦で別々に活用すると世帯全体の枠を広げられる
- 教育資金は「使う時期が決まったお金」として、他の資産と分けて設計する
- 生活防衛資金があることで、育休・時短勤務中も積立を継続しやすい
ライフイベントのたびに戦略を見直す前提を持っておくこと自体が、資産形成を継続するための土台になります。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘・推奨を目的とするものではありません。投資は自己責任で行い、最終判断はご自身で、必要に応じて専門家にご相談のうえ行ってください。