フリーランスエンジニアの資産形成|厚生年金がない分をどう埋めるか

資産形成・財務戦略

はじめに

結論から言うと、フリーランスエンジニアが厚生年金のない分を埋める主な選択肢は「iDeCo」「国民年金基金」「小規模企業共済」の3つで、いずれも掛金が全額所得控除の対象になります。さらに2026年12月分から、自営業者(第1号被保険者)のiDeCo拠出上限が月6.8万円から月7.5万円へ引き上げられる予定です。本記事では、この3制度の違いと組み合わせ方を整理します。

※本記事は架空の条件に基づく情報提供であり、特定の個人への助言ではありません。投資には元本割れリスクがあり、将来の運用成果を保証するものではありません。制度の適用条件・掛金上限は職業区分や加入状況によって異なり、記載の税額はあくまで概算です。具体的な判断は税理士やファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。制度情報は2026年7月時点のものです。

フリーランスは会社員と何が違うのか?

最大の違いは、公的年金の構造です。会社員は国民年金(基礎年金)に加えて厚生年金に加入しており、いわゆる「2階建て」の年金を受け取れます。一方、フリーランス・個人事業主(国民年金第1号被保険者)は国民年金のみの「1階建て」であり、老後に受け取る年金額は会社員より少なくなります。また、会社員のような退職金制度や傷病手当金もないため、この差を自分で埋める設計が必要になります。

厚生年金の代わりになる3つの制度とは?

iDeCo(個人型確定拠出年金)

自分で運用商品を選ぶ私的年金制度です。掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になり、運用益も非課税です。第1号被保険者の掛金上限は2026年7月時点で月6万8,000円(国民年金基金との合算)ですが、2026年12月分(2027年1月引落分)から月7万5,000円(年額90万円)へ引き上げられる予定です。国民年金基金に加入していない方ほど、この改正による節税余地の拡大が大きくなります。ただし、運用成果によっては資産額が掛金総額を下回る可能性があり、原則60歳まで引き出せない点には注意が必要です。

国民年金基金

国民年金に上乗せする形の公的な年金制度で、厚生年金に相当する位置づけです。iDeCoと異なり「確定給付型」で、加入時に将来受け取る年金額が確定するため、運用リスクを取りたくない方に向いています。掛金は全額が社会保険料控除の対象です。終身で受け取れる年金を確保できる点が、フリーランスにとっての安心材料になります。ただし掛金上限はiDeCoと合算で月6万8,000円(改正後は7万5,000円の見込み)のため、iDeCoで枠を使い切ると国民年金基金は利用できません。

小規模企業共済

中小機構が運営する「経営者・個人事業主のための退職金制度」です。掛金は月額1,000円〜7万円の範囲で設定でき、全額が所得控除の対象になります。重要なのは、この上限枠はiDeCo・国民年金基金とは完全に別枠であるという点です。つまり、iDeCoで月7.5万円(改正後)+小規模企業共済で月7万円を併用すれば、合計で月14.5万円分を所得控除に充てられる計算になります。加入できるのは小規模企業の経営者・役員・個人事業主に限られ、業態によって加入資格が細かく分かれているため、事前に公式サイトで確認が必要です。

3制度をどう組み合わせればいい?

項目iDeCo国民年金基金小規模企業共済
受取額運用成果次第(変動)加入時に確定掛金と納付期間で決まる
掛金上限(月額)合算で6.8万円(2026年12月分から7.5万円予定)7万円(別枠)
所得控除全額(小規模企業共済等掛金控除)全額(社会保険料控除)全額(小規模企業共済等掛金控除)
引き出し原則60歳以降原則65歳以降(受給開始年齢は選択)廃業・退任時等(貸付制度あり)

組み合わせの考え方として一般的なのは、まず別枠である小規模企業共済を確保し、そのうえでiDeCoと国民年金基金の共通枠をどう配分するかを検討する順序です。運用リスクを取って資産を増やしたいならiDeCo中心、確定額の終身年金で安心を得たいなら国民年金基金中心、というように、リスク許容度に応じて配分を決めます。両者を併用することも可能です。

注意すべき「10年ルール」とは?

2026年1月以降、iDeCoの一時金を受け取った後、前年以前9年以内に小規模企業共済などの退職所得にあたる一時金を受け取ると、退職所得控除額が調整され、控除が減る可能性があります。複数の制度を併用する場合は、受け取り時期をずらす、あるいは一方を年金形式で受け取って公的年金等控除を活用するといった対策が検討されます。受け取り方によって手取り額が変わるため、実際の受給が近づいたら税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

3制度すべてに満額加入すべき?

節税効果に注目して満額を前提に考えるのは危険です。iDeCoは原則60歳まで、小規模企業共済も廃業・退任時まで原則引き出せないため、手元資金が不足すると事業運営に支障が出ます。まずは生活防衛資金と事業運転資金を確保したうえで、無理のない範囲の掛金から始めるのが現実的です。

iDeCoと新NISAはどちらを優先すべき?

一般的には、10年以上使う予定のない老後資金はiDeCo(所得控除のメリットが大きい)、5〜10年以内に使う可能性のある資金は新NISA(いつでも引き出せる流動性がある)という使い分けが目安とされています。ただし個々の資金計画により最適解は異なります。

2026年12月の改正は自分にも関係ある?

第1号被保険者(自営業者・フリーランス)の掛金上限が月6万8,000円から月7万5,000円へ引き上げられる予定です。国民年金基金に未加入で、iDeCoの枠を使い切っている方ほど、節税余地の拡大幅が大きくなります。手続きの詳細は加入している金融機関の案内を確認してください。

まとめ

フリーランスエンジニアが厚生年金のない分を埋める制度として、iDeCo・国民年金基金・小規模企業共済の3つを解説しました。

  • 小規模企業共済はiDeCo・国民年金基金とは別枠のため、併用で所得控除の枠を広げられる
  • iDeCoと国民年金基金は共通枠のため、リスク許容度に応じて配分を決める
  • 2026年12月分から第1号被保険者のiDeCo上限が月7.5万円へ引き上げ予定
  • いずれも原則として途中で引き出せないため、手元資金の確保が前提

節税額の大きさだけで判断せず、事業の資金繰りとのバランスを見ながら制度を選ぶことが、フリーランスの資産形成では特に重要です。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘・推奨を目的とするものではありません。投資は自己責任で行い、最終判断はご自身で、必要に応じて専門家にご相談のうえ行ってください。

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